貴金属市況:9日のNY市場において、金・銀・プラチナ・パラジウムはすべて上昇
金:3084.63ドル(+51.63)<+1.70%>
銀:30.96ドル(+0.89)<+2.96%>
プラチナ:940.46ドル(+18.46)<+2.00%>
パラジウム:928.19ドル(+15.39)<+1.69%>
米国時間の昨日のNY市場において、貴金属は全て大きく上昇しました。これは、トランプ大統領が突如として発表した相互関税の90日延期を受け、マーケット全般が急騰したことが背景にあります。NYダウは前日比で約3000ドルもの大幅高となり、S&PやNASDAQも大きく買いが優勢となりました。加えて、ドル円相場は144円台前半から148円まで一気に円安が進行し、金は2970ドル付近から3100ドル手前まで上昇するなど、為替と株式の動きに連動して貴金属相場も勢いよく値を伸ばす展開となりました。
このように、一人の大統領の突然の政策転換によりマーケット全体が大きく振り回される状況は、過去38年の貴金属マーケットを振り返っても極めて珍しいと言えます。わずか半日のうちに円建て金価格が861円も上昇するなど、歴史的とも言える変動幅を見せたことは、今後も政策要人の発言や方針転換にマーケットが過敏に反応しやすい土壌をつくる可能性があります。実際、今回の株価急伸と債券市場の不安定さは、トランプ大統領による“ルール違反”とも受け取られかねない発言や行動が誘発した面があるとの指摘もあり、今後の政治的リスク要因として注目されるでしょう。
一方、株価の大暴落時に証拠金確保のために売られていた金が再度買い直される局面となり、下落時には絶好の買い場となった面も見逃せません。実際に3,000ドルを割り込んでいたタイミングで積極的に買い向かった投資家は今回の急反発を捉えて利益を得られたようです。特にシルバーやプラチナでも割安感のある水準で買い指値が成立し、いま振り返ると好機であったと言えるでしょう。
今後の展開としては、トランプ政権の追加関税や政策をめぐる発言が続く限り、瞬間的な相場の乱高下が起こりやすい状況が続くと考えられます。市場が薄れる前例をつくってしまったことで、為替や債券、株式、そして貴金属まで一斉に動きやすい相場付きが当面続くことになりそうです。加えて、米国債の動向やドル円の急変にも注意しながら、金や銀などの貴金属へは引き続き投資マネーが流入しやすい地合いが続くのではないでしょうか。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。