貴金属市況:26日のNY時間において、金が上昇、他は横ばい
金:3347.60ドル(+20.70)<+0.62%>
銀:33.46ドル(±0.00)<±0.00%>
プラチナ:1089.28ドル(+0.28)<+0.03%>
パラジウム:992.75ドル(-5.25)<-0.53%>
米国時間26日はNY市場も英国市場も休場でしたが、電子取引システム(Globex)を通じた金取引は継続されました。
金価格は3350ドルで取引を開始し、アジア市場では米国大統領によるEU向け50%関税の延期発表を受けて下落基調となりました。一時3327ドルまで値を下げましたが、その後は徐々に上昇し、3346ドル前後で推移しています。この動きは、関税政策の不確実性が市場に与える影響と、金の安全資産としての特性が複合的に作用した結果と分析されます。
歴史的な観点からは、1971年以降の米国連邦債務と金価格の相関関係が注目されています。この関係性は通貨供給量(M2)と金価格の相関に類似しており、米国政府の債務管理政策が金市場に与える影響を示唆しています。現在の米国連邦債務は36兆ドルに達し、2024年時点でGDP比5.4%を占めています。格付け会社ムーディーズの予測によれば、2035年にはGDP比9%まで上昇する見込みです。
この債務状況は、米国政府が新規債務発行を通じて既存債務を再編成する「債務のロールオーバー」という手法に依存していることを示しています。財政赤字の拡大と通貨供給量の増加が長期にわたって続く中、金は通貨価値の保存手段としての役割を再評価されています。
米国政府の財政政策、特に減税政策や関税政策の不確実性は、市場のリスク選好に影響を与えています。また、継続する地政学的リスクも、金の投資魅力を高める要因となっています。
銀、プラチナ、パラジウムは横ばいの動きを示し、特にパラジウムは若干の下落を見せました。産業用金属としての需要動向と、安全資産としての特性が複雑に絡み合う中、短期的な値動きは限定的となっています。
今後の市場動向は、米国の財政政策の方向性、中央銀行の金融政策、および地政学的リスクの推移に大きく左右されると予想されます。特に、米国政府の債務管理政策と通貨供給量の増加が、金市場に与える影響は引き続き注目されるでしょう。
市場参加者は、短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、長期的な資産配分の観点から貴金属市場を捉える姿勢が重要となっています。金を中心とした貴金属は、ポートフォリオの多様化とリスク管理の観点から、継続的に検討されるべき資産クラスと位置づけられています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。