貴金属市況:9日のNY市場において、銀・プラチナの上昇が継続、金は小動き
金:3324.99ドル(-36.20)<-1.08%>
銀:36.78ドル(+0.65)<+1.80%>
プラチナ:1228.31ドル(+19.31)<+1.60%>
パラジウム:1082.25ドル(+32.25)<+3.07%>
米国時間9日のニューヨーク市場において、貴金属相場は金に対して長期間にわたり割安状態にあった銀とプラチナの逆転攻勢が継続する展開となりました。
銀相場は前日の36ドル台を維持し、さらに上昇して高値は36.89ドルまで達しました。現在は36.80ドル近辺で推移しており、これは2011年以来の水準となります。この時は銀の歴史的高値49.5ドルを記録した大きな上昇相場の下降途中でした。
銀が本格的な上昇を始めたのは6月2日、それまで何度も挑戦しながら完全に突破できなかった33.5ドルの重要な抵抗線を大きく上抜けしてからです。この節目突破により機関投資家による大規模な買い注文が入ったと考えられます。その後も1ドル上昇するごとにさらなる買い注文が続きました。
金銀価格比率が100対1を超える状況は、歴史的に見ても銀が非常に割安であったことを示しており、多くの投資家が注視していた重要なポイントでした。銀の重要な価格水準突破により、一斉に投資資金が流入したと推測されます。
金銀価格比率は銀の急上昇により90対1まで急低下しましたが、歴史的に見ると依然として銀が割安な水準にあります。過去10年の平均は80対1、過去20年の平均は70対1となっています。
プラチナ相場の上昇も継続しています。年初からの上昇率では、プラチナが33.88%と首位に立ち、銀が26.86%で2位、金は26.75%で3位となりました。銀と金の上昇率はほぼ同水準ですが、プラチナが大きくリードしています。
プラチナは長期間にわたり金との価格差が拡大し続け、金価格の3.5分の1まで下落していました。しかし、これは同じ金額で3.5倍の量を購入できることを意味し、もし同じ金額だけ上昇すれば、プラチナは3.5倍の利益をもたらすことになります。この理論が現実化してきています。
現在でも価格面では、プラチナは金の3分の1に近い割安水準にあります。そのため、投資戦略として金だけでなく、プラチナと銀も同時に積み立て投資することが推奨されます。
プラチナの1か月物リース金利(貸出金利)は16%という異常に高い水準にあります。これは明らかに現物の供給不足を示しています。今回のプラチナ上昇は、過去数回の1100ドルへの上昇後に900-1000ドルレンジに戻るという動きとは最大の違いを見せています。
どこかから現物が供給されてこの逼迫した流動性状況が解決されない限り、プラチナ価格はさらに上昇する可能性が高いと考えられます。現在の状況では売りポジションの構築は推奨されません。
米中間の貿易交渉が継続されており、トランプ大統領と習近平国家主席との電話会談が「非常に良い電話会談」として評価されました。米国財務長官スコット・ベセント氏と中国副首相何立峰氏が代表団を率いてロンドンで交渉を行う予定です。
地政学的緊張も貴金属価格を下支えしています。ロシアが週末にウクライナに対してミサイル・ドローン攻撃を実施し、キエフで3人が死亡、市内で火災が発生しました。
また、供給不足と堅調な工業需要も価格上昇要因となっています。世界プラチナ投資協議会(業界団体)は、2025年に約100万オンスの供給不足が発生すると予測しています。
貴金属市場全体では、金に対する長期的な割安状況にあった銀とプラチナが本格的な見直し局面に入っており、分散投資の重要性が改めて注目されています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。