貴金属市況:20日のNY市場において、金相場は週末リスクヘッジ需要で上昇、プラチナは利益確定売りで調整
金:3374.18ドル(+31.18)<+0.93%>
銀:36.08ドル(+0.48)<+1.35%>
プラチナ:1262.17ドル(-24.61)<-1.91%>
パラジウム:1048.50ドル(+5.30)<+0.51%>
米国時間20日のニューヨーク市場において、地政学的リスクを背景とした安全資産需要が継続する中、各金属で異なる動きが見られました。
金価格は3374.18ドルで取引を終了し、前日比31.18ドル(0.93%)の上昇となりました。先週のイスラエル・イラン情勢緊迫化を受けて月曜日に記録した3451ドルの史上最高値からは調整局面にありますが、3300ドル台半ばでの下値支持は堅固な状況が続いています。
世界ゴールド協議会(WGC)によると、2025年第1四半期の中央銀行による金購入量は290トンに達し、四半期ベースでは過去最大の規模となりました。特に中国、インド、その他新興国による「ドル離れ」を背景とした金購入の流れは、2022年から3年連続で年間1000トンを超える規模で継続しており、金価格の構造的な押し上げ要因となっています。
連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利据え置き決定とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の慎重姿勢は、金利上昇圧力を抑制し、無利子資産である金にとって支援的な環境を維持しています。
銀価格は36.08ドルで前日比0.48ドル(1.35%)上昇し、2012年以来の13年ぶり高値圏を維持しています。銀市場は5年連続の供給不足に直面しており、工業需要が全体の需要の50%以上を占める構造変化が価格を下支えしています。
特に太陽光発電パネル、電子機器、電気自動車の普及拡大により、銀の工業需要は急速に拡大しています。太陽光発電業界だけで年間約2億オンスの銀を消費しており、これは全世界の銀需要の約20%に相当します。中東情勢の不安定化により、安全資産としての銀需要も同時に高まっています。
プラチナ価格は1262.17ドルで前日比24.61ドル(1.91%)下落しました。しかし、これは6月に入ってから約30%上昇した後の利益確定売りによるものと分析されています。
プラチナは2025年に入ってから45%以上上昇し、2014年9月以来の10年ぶり高値となる1330ドル台まで上昇していました。この急騰の背景には深刻な供給不足があります。世界プラチナ投資協議会(WPIC)の5年間需給見通しによると、プラチナ市場の供給不足は今後も継続する見込みです。
また、金価格の高騰により中国の宝飾品需要が金からプラチナにシフトしている現象も注目されています。中国金協会によると、2025年第1四半期の中国における金宝飾品消費は前年同期比27%減少しており、代替需要としてプラチナへの関心が高まっています。
自動車産業での触媒需要に加え、水素経済の発展に伴う燃料電池技術での需要拡大も、プラチナの構造的な需要増加要因となっています。アジア市場、特に中国とインドからの実需による購入も、価格上昇を支えています。
パラジウムは1048.50ドルで前日比5.30ドル(0.51%)上昇しました。自動車産業における触媒需要が主要な価格決定要因となっており、電気自動車への移行が進む中でも、ハイブリッド車や内燃機関車での需要は継続しています。
貴金属セクター全体では、地政学的リスク、インフレ懸念、中央銀行の金購入継続、工業需要の拡大という複数の支援要因が重なっています。特に金とプラチナの価格比率が3年ぶりの低水準まで縮小しており、プラチナの相対的な割安感が注目されています。
イランの最高指導者がトランプ大統領の無条件降伏要求を拒否し、テヘランからの大規模避難が行われるなど、中東情勢の緊迫化は安全資産需要を継続的に支えています。
金価格については、RSI(相対力指数)とストキャスティクス指標に弱気な乖離が見られるものの、構造的な上昇トレンドは維持されています。プラチナについては、1260ドル(上昇10日移動平均線)の初期サポートを下回り、1240ドル(23.6%フィボナッチ・リトレースメント)が注目されています。
今後の注目点としては、イスラエル・イラン情勢の展開、FRBの金融政策方針、中国をはじめとする新興国の中央銀行による金購入動向、そして工業需要の持続性が挙げられます。特に銀とプラチナについては、工業需要の拡大が価格の構造的な押し上げ要因となる可能性が高いと市場では分析されています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。