貴金属市況:25日のNY市場において、金相場は小幅反発、プラチナは史上最高値圏で推移
金:3335.20ドル(+4.71)<+0.14%>
銀:36.32ドル(+0.39)<+1.09%>
プラチナ:1360.66ドル(+45.66)<+3.47%>
パラジウム:1073.28ドル(+9.15)<+0.86%>
25日のNY貴金属市場では、中東情勢の緊張緩和とドル安を背景に、各金属が異なる動きを見せました。
金価格は3335.20ドルで取引を終了し、前日比4.71ドル(0.14%)の小幅上昇となりました。円建て金価格は午前中に15462円まで下落しましたが、その後は戻り基調となりました。ドル円相場は144.60円で底打ちし、午後はひたすら上昇、夜21時過ぎには146円にタッチしました。ドル建て金価格は3320ドルから3330ドルの狭いレンジで推移しながらも、最終的には3330ドル台に上昇しました。
米商務省が発表した5月の新築一戸建て住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比13.7%減の62万3000戸と、7か月ぶりの低水準を記録しました。この弱い経済指標を受けて外国為替市場でドル指数が下落したことから、金相場を支える展開となりました。
円建て金価格は安値の15462円から15602円まで上昇し、現在は15550円付近で推移しています。ドル円の動きが144-148円と大きなレンジとなっており、円建て金価格の方が動きやすい状況が続いています。
連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言を控え、金利政策への注目が高まっています。トランプ大統領とFRBの間での金利政策を巡る意見の相違が続いており、この不確実性が金価格の下支え要因となっています。
銀価格は36.32ドルで前日比0.39ドル(1.09%)上昇しました。早朝のトランプ大統領によるイスラエル・イラン停戦宣言により36ドルから35.3ドル割れまで大きく下落しましたが、その後は大幅に戻し、早朝には36.3ドルを超えるレベルまで上昇しました。
しかし、先日つけた13年ぶり高値の37ドルから大きく上昇するためには、さらなる大きな買い材料が必要な状況です。中国が6月1日以降、太陽光発電の買い取り価格を固定価格から市場価格に変更したことで、すでに13以上の大型プロジェクトがキャンセルされたと報道されており、この動きは長期的に銀価格上昇のブレーキになる可能性があります。
プラチナ価格は1360.66ドルで前日比45.66ドル(3.47%)の大幅上昇となり、最も注目される動きを見せました。昨夜は1369ドルまで上昇し、円建てでも年初来高値を更新して6390円に達しました。上昇トレンドは継続中で、リース金利は一か月15.48%とわずかに緩和されましたが、依然として非常に高い水準にあります。
世界プラチナ投資協議会(WPIC)の分析によると、プラチナ市場は構造的な供給不足が続いており、工業需要の拡大と投資需要の増加が価格を押し上げています。特に中国市場では金価格の高騰により、宝飾品需要が金からプラチナにシフトする現象が観察されています。
バルテラ・プラチナ(旧アングロ・アメリカン・プラチナ)のクレイグ・ミラー最高経営責任者(CEO)は、プラチナ価格の上昇は持続可能であると述べ、市場の需給バランスが供給不足に傾いていることを強調しました。電気自動車(EV)への移行は進んでいるものの、内燃機関車やハイブリッド車での需要は継続しており、プラチナ族金属(PGM)の需要は堅調に推移しています。
パラジウムは1073.28ドルで前日比9.15ドル(0.86%)上昇しました。4月7日の安値883.50ドルから25.5%上昇し、1000ドルの重要な節目を上回って推移しています。自動車産業における触媒需要が主要な価格決定要因となっており、米国のエネルギー政策が化石燃料を重視する方向性であることも、長期的な需要増加要因として評価されています。
貴金属セクター全体では、地政学的リスクの後退がリスクオン要因となる一方で、構造的な供給不足問題と工業需要の拡大が価格を下支えしています。特にプラチナとパラジウムについては、金や銀と比較して相対的に割安感があることから、投資資金の流入が期待されています。
中国の上海金取引所は、香港での金契約上場を発表し、金市場の国際化を進める方針を示しました。これは中国の人民元国際化戦略の一環であり、ドル依存からの脱却を図る動きとして注目されています。
技術分析面では、金価格は3300ドル台での時間調整的な動きが続いており、年初の2600ドルからの急激な上昇を考慮すると、適切な調整局面とも評価できます。プラチナについては、2021年2月高値の1348.20ドルに接近しており、この水準を上抜けすれば2008年3月の史上最高値2308.80ドルへの挑戦が視野に入ります。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。