貴金属市況:26日のNY市場において、プラチナ・パラジウムが続伸、金は小幅上昇
金:3328.05ドル(-5.08)<-0.15%>
銀:36.71ドル(+0.38)<+1.05%>
プラチナ:1425.55ドル(+44.55)<+3.23%>
パラジウム:1140.45ドル(+40.45)<+3.68%>
26日のNY貴金属市場では、プラチナ族金属(PGM)が大幅上昇する一方、金は小幅な動きに留まるなど、各金属で明確な差異が見られました。
金価格は3328.05ドルで取引を終了し、前日比5.08ドル(0.15%)の小幅安となりました。中東情勢の緊張緩和や株高を受けて売りが優勢となり、一時3322.5ドルの安値を付ける場面がありましたが、その後は米長期金利の低下を受けて買い戻しが入り、下げ幅を縮小させました。
最近の金価格は年前半の前代未聞のスピードでの上昇(2600ドルから3500ドル)の調整局面に入っており、しばらくは3300-3400ドルの間での動きが続くと予想されます。特に株式市場が中東情勢などの地政学的要因に対して免疫ができつつあることから、金はサイドライン状態となる可能性があります。
連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る不確実性が高まっており、トランプ大統領がパウエル議長の交代を検討しているとの報道が金価格の支援要因となっています。市場では今後数か月内での利下げ可能性が高まっており、7月にも実施される可能性があるとの見方も浮上しています。
銀価格は36.71ドルで前日比0.38ドル(1.05%)上昇しました。ドル安を背景に36ドル台を回復し、月末フローの影響で米ドルが下落したことが支援要因となりました。先週金曜日に2週間ぶりの安値である35.29ドルを付けた後、「モーニングスター」と呼ばれる3本足チャートの強気パターンを形成しています。
技術分析面では、6月20日高値の36.42ドルが重要な抵抗レベルとなっており、この水準を上抜けすれば37ドル、さらに13年ぶり高値の37.31ドルへの挑戦が視野に入ります。下方向には6月24日安値の35.29ドル、50日単純移動平均線の33.95ドルがサポートレベルとなっています。
プラチナ価格は1425.55ドルで前日比44.55ドル(3.23%)の大幅上昇となり、2014年以来の高値圏で推移しています。供給懸念と米国・中国による投機的買いの波が市場を刺激しており、4.6%の急騰場面もありました。
プラチナ市場では、およそ50万オンスが米国の倉庫に流入し、関税への懸念と有利な裁定取引によって市場のタイト感が強まっています。フォワード価格がスポット価格を下回るバックワーデーション(逆ざや)状態が続いており、これは市場の逼迫した状況を示しています。1か月リース金利は年率約13%と、通常のゼロ近辺から大幅に上昇しています。
リース金利の高止まりと現物不足により、プラチナ価格は上昇の一途を辿っています。円建てでも6630円とドル建て・円建てともに年初来高値を更新し、長期的には2008年以来の高値圏に達しています。世界の在庫システムが分断化する中、取引可能なプラチナが極めて少ない状況が続いています。
パラジウムは1140.45ドルで前日比40.45ドル(3.68%)の大幅上昇となり、昨年11月以来の高値を記録しました。6%を超える上昇幅を見せる場面もあり、円建て・ドル建てともに年初来高値を更新しました。
プラチナ族金属(PGM)全体で見ると、金価格の年前半での急騰により、相対的に割安となったPGMや銀に投資家の関心が向かっている状況です。金が3300ドル台前半での小動きが続く中、PGMの上昇余地は依然として大きいと評価されています。
ロシアが2025-2027年連邦予算で515億ルーブル(約5.35億ドル)を貴金属購入に割り当て、50年ぶりに銀を中央銀行準備資産に含めると発表したことも、貴金属セクター全体への注目を高めています。これは西側制裁を受けた脱ドル化戦略の一環と分析されています。
貴金属セクター全体では、地政学的要因への市場の慣れがある一方で、構造的な供給不足問題と工業需要の拡大が価格を下支えしています。特にプラチナとパラジウムについては、金と比較して相対的な割安感が強く、投資資金の流入が続いています。
技術分析面では、金価格は年初の2600ドルからの急激な上昇を考慮すると、現在の調整局面は適切な範囲内とも評価できます。一方、プラチナについては2008年3月の史上最高値2308.80ドルへの挑戦が現実的な目標として浮上しています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。