貴金属市況:11日のNY市場において、金は狭いレンジで値固め、銀は14年ぶり高値41.76ドルを更新
金:3635.28ドル(-6.86)<-0.19%>
銀:41.58ドル(+0.51)<+1.24%>
プラチナ:1385.05ドル(+3.50)<+0.25%>
パラジウム:1196.93ドル(+22.43)<+1.91%>
11日のNY貴金属市場では、注目されていたCPI(消費者物価指数)の発表がありました。日本時間15時15分現在、金価格は3635.28ドルで前日比6.86ドル(0.19%)の小幅下落となりました。各金属の価格は日本時間15時15分現在の値となっています。
発表されたCPIの数字は前年同月比2.9%となり、市場予想と一致する結果でした。インフレ目標の2%は超えるものの制御困難というレベルではなく、FRBの利下げを回避するレベルではないという判断となりました。同時に発表された新規失業保険申請件数(Jobless Claims)は市場予想23.5万件を上回る26.3万件となり、雇用市場の減速を示すものとなりました。
これらの経済指標を受けて、今月のFRB利下げがより確実なものとなったことから、株価は堅調な推移となりました。米株は軒並み史上最高値を更新し、リスク選好の動きが強まりました。一方で金価格は、CPI発表直後に3617ドルから3643ドルまで跳ね上がったものの、その上昇分はすぐに戻し、その後は3630-3640ドルという狭いレンジでの動きとなっています。
金市場では、3400ドルから3700ドル手前までの短期的な大幅上昇の調整局面が続いており、しばらくは3600ドル台での値固めが続くと考えられます。技術的には、RSIが依然として買われ過ぎ圏にあるため、さらなる上昇の前に短期的な調整や値固めが必要な状況です。
一方、昨日は銀価格が大きな注目を集めました。銀は14年ぶりの高値を更新し、新高値は41.76ドルに達しました。これは銀のみの動きであったため、金銀比価は88から87.6へと低下しました。銀価格は41.58ドルで前日比0.51ドル(1.24%)の上昇となり、強い上昇基調を維持しています。
銀市場の強さの背景には、複数の構造的要因があります。まず、銀のリースレートが金よりもはるかに高い水準にあり、ロンドンのメタルアカウント残高も大きく減少傾向にあることが挙げられます。これは物理的な銀の供給がタイトな状況にあることを示しています。
さらに、米国が先月、銀を国家安全保障上重要な鉱物として分類したことで、トランプ大統領の関税政策の対象となる可能性への懸念が高まっています。これを受けて、ニューヨーク先物市場では国際的なベンチマークであるロンドン現物価格に対して約70セントのプレミアムで取引されており、トレーダーが関税リスクを織り込んでいることが伺えます。
銀の借入コストも急上昇しており、ロンドンでの短期借入コストは5%を超える水準に達しています。これは歴史的にほぼゼロに近い水準であったことを考えると異常な高さです。また、1年物の価格が現在価格を下回る逆イールド現象も発生しており、これは即座に利用可能な銀への需要が極めて強いことを反映しています。
技術的には、銀価格は8月下旬以来の上昇並行チャネル内で推移しており、40.91ドルの下限チャネルラインが重要なサポートとなっています。41.66ドルと42.22ドルの上限チャネルラインが抵抗レベルとして機能しており、これらを上抜ければさらなる上昇が期待されます。
市場には多くの「シルバーブル」(銀の強気論者)が存在し、彼らは50ドルはおろか、銀価格が簡単に100ドルまで上昇すると考えています。実際、シルバーの専門家による最新の分析では、銀の強気相場が本格的に開始されており、300ドルを超える価格も視野に入るとの見解も示されています。
需給面で考えると、こうした強気論も決して荒唐無稽ではないことが分かります。銀の工業需要は、クリーンエネルギー技術や電子機器での用途拡大により継続的に増加しており、一方で供給面では構造的な制約が続いています。これらの要因が組み合わさることで、銀価格の爆発的な上昇が突然発生する可能性があります。
金価格については、3630ドル付近で推移しており、投資家が米国データを消化している段階です。新規失業保険申請件数の急増が米ドルを押し下げ、金価格の下落を限定的なものにしています。ただし、8月のCPIデータがアナリスト予想をわずかに上回ったことで、上昇圧力も抑制されています。
技術的には、金価格は当面3620ドル付近のサポートを試すと予想され、さらに下落すれば3600ドルの心理的節目、3580ドル付近の週安値が重要なポイントとなります。上値については、アジア時間高値の3649ドル、夜間高値の3657-3658ドルが当面の抵抗となり、これらを上抜ければ史上最高値3675ドルの再テストが視野に入ります。
地政学的リスクは引き続き貴金属の支援材料となっています。ポーランドが水曜日にロシアのドローンを撃墜したことは、NATO加盟国がロシア・ウクライナ戦争で初めて実際に発砲したケースとなり、地政学的緊張のさらなるエスカレーションリスクを高めています。また、トランプ大統領がロシアに対するより厳しい制裁を脅かしており、これらの要因が貴金属の安全資産としての地位を支えています。
プラチナ価格は1385.05ドルで前日比3.50ドル(0.25%)の小幅上昇となりました。プラチナ市場では投資商品としての需要が供給不足の中で急増しており、構造的な強気要因が継続しています。自動車触媒需要の回復と工業用途での需要増加により、プラチナの需給バランスは改善傾向にあります。
パラジウム価格は1196.93ドルで前日比22.43ドル(1.91%)の上昇となりました。ロシアに対する制裁強化の見通しが供給不安を高めており、パラジウム市場では買い圧力が強まっています。
市場全体としては、金価格が高値圏での値固め期間に入る一方で、銀価格が新たな強気相場の初期段階にある可能性が高いと考えられます。FRBの利下げ期待、地政学的リスクの継続、そして特に銀においては構造的な供給不足と工業需要の拡大が、貴金属市場全体の強気基調を支えています。
来週のFOMC会合では、25ベーシスポイントの利下げがほぼ確実視されており、50ベーシスポイントの大幅利下げの可能性も残されています。これらの金融緩和期待は、利回りを生まない貴金属にとって引き続き追い風となるでしょう。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。






