貴金属市況:29日のNY市場において、金3829.75ドルで史上最高値更新、「買いが買いを呼ぶ」展開で全面高継続
金:3829.75ドル(+15.29)<+0.40%>
銀:46.86ドル(-0.09)<-0.19%>
プラチナ:1600.80ドル(-18.50)<-1.14%>
パラジウム:1262.81ドル(-29.04)<-2.25%>
29日のNY貴金属市場では、まさに「買いが買いを呼ぶ」展開となりました。金価格は日本時間15時15分現在3829.75ドルで前日比15.29ドル(0.40%)の上昇となり、再び史上最高値を更新しました。ドル建ても円建ても大きく歴史的高値を更新し、プラチナも銀も十数年ぶりの高値を更新する全面高の展開となっています。
金は9月初旬にそれまで4ヶ月続いた3300-3400ドルのレンジを上抜けしてから一ヶ月で、3400-3500-3600-3700そして3800ドルを超えて3829.75ドルと、実に430ドル近い急騰を演じました。
この急騰の背景には複数の段階があります。まず年初の1月から4月にかけて2600ドルから3500ドルへの900ドルの急騰は、トランプ大統領就任と関税戦争の結果に対する金買いが原動力となりました。特に4月の関税戦争以降は中国の買い(中央銀行も個人も)が大きく金を引き上げました。SGE(上海黄金交易所)とSHFE(上海期貨取引所)といった中国の取引所の金価格出来高が急騰し、ロコ・ロンドンに対する価格プレミアムも急騰しました。
その後同じく4ヶ月間は3300-3400ドルのレンジでの取引となりました。この間は急騰した金価格レベルがマーケットで消化された期間であったと考えられます。そのレンジを上に突き抜けたきっかけを与えたのが、トランプ大統領によるFRBクック理事解任のSNS発言でした。FRBの独立性侵害への不安が金買いのきっかけとなり、FRBの利下げと今後も続く利下げの見通しがそれに油を加えました。
しかし、それだけではこの9月の430ドル急騰の理由としては不十分です。他に目立つニュースがないのにこれだけの上昇を演じたのは、3400ドルのレンジ天井を破ったことによって、これまで我慢していた欧米の機関投資家、個人投資家たちが「金を持たざるリスク」を強烈に意識したからです。
金を持っていれば年初からのパフォーマンスは40%です。これに対し、米株(S&P500)は10%、日本株(日経平均)15%、ビットコインは14%、米ドルはマイナス9%となっています。ファンドマネジャーとしては金を持っていないと、その運用パフォーマンスは持っているファンドマネジャーに対して大きく劣後することになります。そういった資金運用者からの買いが一斉に入っているのが現在の状況です。
4月5月のSHFE(上海期貨取引所)とロコ・ロンドン金の価格関係を見れば、当時買っていたのが中国の投資家であり、今買っているのは中国以外の投資家であることが分かります。4-5月は中国が大きなプレミアムであったのに対して、現在9月の金急騰時は中国は大きなディスカウントになっています。そして世界の金ETFは逆に9月に大きくその残高が増えており、資金流入が明らかです。
現在、欧米を中心とする資金運用者で実際に金をそのポートフォリオに入れているファンドの割合はまだごくわずかです。だとすればこの買いはまだまだこれから膨らんでいく可能性が高いと考えられます。金が上がれば上がるほどそういった買いは増えると予想されます。
銀価格は46.86ドルで前日比0.09ドル(0.19%)の小幅下落となりましたが、依然として14年ぶりの高値圏を維持しています。金曜日には2.6%上昇して46.41ドルとなり、14年ぶりの高値を記録しました。44.22ドルの重要な抵抗レベルを上抜けた後、次の目標は心理的に重要な50ドルのハンドルに近い49.81ドルとなっています。
中国の炭素排出削減公約が銀需要を押し上げています。太陽光発電技術において銀は不可欠であり、この構造的需要の増加が価格を支えています。また、フリーポートのグラスバーグ鉱山でのフォースマジュール(不可抗力)宣言が供給面での懸念を高めており、これも価格の上昇要因となっています。
プラチナ価格は1600.80ドルで前日比18.50ドル(1.14%)の下落となりましたが、依然として高水準を維持しています。NYMEX(ニューヨーク商品取引所)でのプラチナ価格は1600ドルを超え、2013年4月1日以来初めてとなりました。年初来では78.74%の上昇、9月に入ってからは14.52%の上昇を記録しています。
プラチナは29日の取引で強気の動きを見せ、1595.00ドルの抵抗を上抜けして1620.00ドル近辺で安定しています。1595.00ドル以上での価格安定は強気攻勢再開の可能性を高めており、1642.00ドルを経て1690.00ドルの主要目標到達が期待されています。
パラジウム価格は1262.81ドルで前日比29.04ドル(2.25%)の下落となりました。他の貴金属に比べて調整色が強くなっていますが、ロシアに対する制裁懸念は継続しており、中長期的な供給不安材料として価格を下支えする要因となっています。
技術的には、銀のRSI(相対力指数)が81.15に達しており、買われ過ぎの状況を示しています。50ドルへの本格的な攻勢の前に一時的な調整が入る可能性があります。しかし、44.20ドルが支持される限り、強気トレンドは維持されると見られています。
金については、3791.26ドルの突破が次の重要なポイントとなります。ここを明確に上抜ければ3879.64ドルが視野に入りますが、3709.61ドルを下回れば3627.96ドルまでの調整リスクがあります。
市場全体としては、FRBの利下げ期待が継続しており、10月の利下げ確率は88%、12月は65%となっています。10年債利回りは4.183%付近で推移し、2年債は若干低下しています。ドルは2週連続の上昇後も堅調を維持していますが、これが貴金属への逆風となる可能性もあります。
今後の注目材料は来週の雇用統計です。予想を下回る結果となればFRBの利下げ期待が再燃し、ドル安圧力と共に貴金属のさらなる上昇を後押しする可能性があります。一方、強い雇用データは利下げ期待を後退させ、より深い調整を引き起こす可能性があります。
歯科治療で使用される金銀パラジウム合金をお持ちの方にとって、現在の価格水準は売却に絶好のタイミングです。金が史上最高値を更新し続ける中、保有されている歯科金属の価値も大幅に上昇しています。特に金の小売価格が2万円を超えた現状では、不要な歯科金属の売却には最適な機会となっています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。






