貴金属市況:27日のNY市場において、金は米中対立懸念の緩和で4000ドル割れ、銀も大幅下落で正常化の兆し、プラチナは中国の税制変更で乱高下
金:3989.40ドル(-91.83)<-2.25%>
銀:46.77ドル(-1.57)<-3.25%>
プラチナ:1594.50ドル(-17.90)<-1.11%>
パラジウム:1415.00ドル(-14.76)<-1.03%>
27日のNY貴金属市場では、金価格が大幅な下落となり、重要な心理的節目である4000ドルを割り込む展開となりました。金価格は日本時間15時15分現在3989.40ドルで前日比91.83ドル(2.25%)の下落となりました。銀は46.77ドルで前日比1.57ドル(3.25%)の下落、プラチナは1594.50ドルで前日比17.90ドル(1.11%)の下落となりました。パラジウムは1415.00ドルで前日比14.76ドル(1.03%)の下落となりました。
金価格の急落は、米中貿易摩擦の緩和期待が背景にあります。ベセント米財務長官は26日、ABCテレビのインタビューで、11月1日から課すとしていた100%の対中追加関税について「回避される」と言明しました。新たな対立のきっかけとなった中国によるレアアースの輸出規制強化をめぐり、「再検討のため、中国が実施を1年間延期するだろう」と語りました。この発言を受けて、米中対立への警戒感が大きく後退し、安全資産としての金への需要が減退しました。
27日の取引では、NY金先物中心限月12月限が前営業日比118.1ドル安の4019.7ドルとなり、日中の取引では一時4000ドルの節目を割り込む場面もありました。これは、10月21日に記録した史上最高値4381.21ドルから約380ドル、率にして約8.7%の下落となります。
今回の調整は、年初からの一方的な上昇トレンドに対する初めての本格的な修正局面と言えます。金価格は9週間連続で上昇を続けた後、前週から本格的な調整局面に入りました。特に9月以降の約1000ドルという急激な上昇を考えると、この調整は市場にとって必要なものだったと見られています。
市場では、4000ドルという心理的な節目を割り込んだことで、さらなる下落への警戒感も出ています。ただし、金価格を押し上げてきた構造的な要因、すなわち通貨システムへの不信感、地政学的リスク、インフレ懸念などは依然として継続しています。そのため、この調整局面は一時的なものであり、中長期的な上昇トレンドは変わらないとの見方も根強くあります。
インドと中国では、価格高騰を受けて買い控えの動きが見られています。インドでは、購入者がさらなる価格調整を待っている状況です。一方、中国とシンガポールでは、価格下落を受けて新たな買いが入り始めているとの報告もあります。
銀価格は46.77ドルとなり、3.25%の下落となりました。銀は金よりも大きな下落率を示しており、ボラティリティの高さが際立っています。一時は価格が8%以上下落する場面もあり、2021年以来の最も急激な日中下落となりました。
銀市場では、供給状況に変化が生じています。市場関係者によると、ニューヨークのCOMEX倉庫からロンドンへ、通常の海上輸送ではなく飛行機を使って銀が大量に輸送されているとのことです。この物理的な移動により、ロンドン市場での銀の在庫が回復し始めています。
この在庫回復を反映して、銀のリースレートが大幅に低下しました。1か月物のリースレートは、わずか3日間で20%から5.6%へと下落しました。ただし、5.6%という水準は依然として高く、通常時の1%以下と比べると構造的な供給不足が続いていることを示しています。
TDSのシニアコモディティストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、ロンドンの金庫に記録的な量の銀が流入したことで、銀市場は正常化に向かっていると指摘しています。同氏は、インド準備銀行の介入によってインドの需要も減少しており、銀価格は40ドル近辺まで下落する可能性があると予測しています。また、50ドルの心理的節目を突破できなかったことで、投機筋の大規模な撤退が始まる可能性も指摘されています。
ただし、銀の長期的な見通しは依然として強気です。太陽光発電パネルや電気自動車など、産業需要の増加が続いており、構造的な供給不足は解消されていません。一部のアナリストは、今後8か月から12か月の間に、銀価格が60ドルまで上昇する可能性があると予測しています。
プラチナ市場では、中国の税制変更により大きな変動が見られました。中国財務省は、11月1日から、2003年以来続いていたプラチナの輸入および国内生産に対する付加価値税の還付制度を廃止すると発表しました。11月1日以降は、13%の税が課されることになります。
この発表を受けて、上海金交易所でのプラチナ価格が国際市場価格を大きく上回る状況となりました。これは、税制変更前に輸入しようとする駆け込み需要が発生したためです。24日には、プラチナのスポット価格が6.4%上昇し、1646ドルまで急騰する場面がありました。これは、2020年以来最大の日中上昇率となりました。
興味深いことに、先物価格の上昇率は4.1%にとどまり、現物市場と先物市場の間に1オンスあたり53ドルを超えるプレミアムが発生しました。通常、これら2つの市場は連動して動くため、このギャップは現物への需要が急激に高まっていることを示しています。
コメルツバンクのアナリスト、カルステン・フリッチュ氏は、プラチナが金や銀の調整に連動して一時的に下落したものの、その後すぐに回復したことを指摘しています。同氏は、プラチナが金に対して大幅に割安な状態にあることが、急激な価格下落を防ぎ、素早い回復に寄与したと分析しています。
ただし、11月1日以降は状況が変わる可能性があります。税制変更後は、中国のプラチナ需要が大きく減少すると予想されています。世界プラチナ投資協議会によると、中国は過去3年間、世界のプラチナ需要の30%以上を占めてきました。そのため、中国の需要減少は、プラチナ価格に下押し圧力をかける可能性があります。
それでも、プラチナ市場の基調は依然として逼迫しています。世界プラチナ投資協議会のトレバー・レイモンドCEOは、プラチナ市場が構造的な供給不足にあると警告しています。プラチナの生産は南アフリカとロシアに大きく依存しており、2024年の生産の約90%がこの2か国から供給されています。
南アフリカでは、ブッシュフェルト火成岩複合体が世界の既知埋蔵量の約75%を保有していますが、鉱山の老朽化、電力不足、労働争議などの問題が生産を制約しています。また、ロシア産プラチナについては、米国の経済制裁強化により供給が制限される可能性があります。
パラジウム価格は1415.00ドルで1.03%の下落となりました。年初来では依然として50%程度の上昇を記録していますが、短期的には他の貴金属と同様に調整局面にあります。ただし、ロシアに対する経済制裁強化により、今後供給不足が深刻化する可能性があります。
貴金属市場全体として、金と銀は大きな調整局面に入っている一方、プラチナとパラジウムは独自の需給要因により異なる動きを見せています。金と銀が主に投資需要と地政学的要因で動いているのに対し、プラチナグループメタルは産業需要と供給制約が主な価格決定要因となっています。
今後の展開について、市場参加者の注目点は、金が4000ドルを明確に下回る展開となるかどうかです。4000ドルを下回る状態が続けば、次のサポートラインは3900ドル近辺になると見られています。一方、ここから反発すれば、4000ドルから4150ドルのレンジ相場が形成される可能性があります。
銀については、当面は正常化の過程が続き、40ドルから50ドルのレンジでの推移が予想されています。ただし、構造的な供給不足は継続しているため、中長期的には再び上昇トレンドに転じる可能性が高いと見られています。
プラチナについては、11月1日の中国の税制変更後の需要動向が焦点となります。駆け込み需要が一巡した後、需要がどの程度減少するか、そしてそれが価格にどの程度の影響を与えるかが注目されています。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。






