貴金属市況:30日のNY市場において、金は米中貿易合意も懐疑論から反発、銀はスーパーサイクル初期段階、PGMは2026年価格予測引き上げ
金:4024.75ドル(+62.00)<+1.56%>
銀:48.98ドル(+1.28)<+2.68%>
プラチナ:1611.90ドル(+13.90)<+0.87%>
パラジウム:1464.17ドル(+42.37)<+2.98%>
30日のNY貴金属市場では、金価格が続伸し、再び4000ドル台を回復する展開となりました。金価格は日本時間15時15分現在4024.75ドルで前日比62.00ドル(1.56%)の上昇となりました。銀は48.98ドルで前日比1.28ドル(2.68%)の上昇、プラチナは1611.90ドルで前日比13.90ドル(0.87%)の上昇となりました。パラジウムは1464.17ドルで前日比42.37ドル(2.98%)の大幅上昇となりました。
30日の金先物取引では、NY金先物中心限月12月限が前日比15.2ドル高の4015.9ドルとなりました。市場では米中首脳会談の成果が注目されましたが、合意内容に対する懐疑的な見方が広がり、押し目での買いが優勢となりました。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は30日、韓国南部の釜山で会談しました。中国政府は会談後、米国が問題視していたレアアースの輸出規制の導入を1年間延期すると発表しました。トランプ大統領は、合成麻薬フェンタニルの米国流入問題に中国が取り組むとして、対中関税を10%引き下げる方針を示しました。
中国側は米国の関税に対する報復措置を見直すほか、縮小していた米国産大豆の購入も拡大することを表明しました。米中貿易摩擦の激化への懸念が和らいだことで、当初は株式市場が堅調に推移し、安全資産としての金への需要が後退する場面もありました。
しかし、合意内容の詳細が明らかになるにつれて、市場の一部では貿易戦争の終結への楽観論に対する懐疑的な見方が浮上しました。これまでも米中間では何度も合意が発表されながら、その後の実施段階で問題が生じてきた経緯があります。このため、今回の合意についても、実際の履行がどの程度進むかを見極める必要があるとの慎重な見方が広がりました。
この懐疑論を背景に、金の押し目買いが優勢となりました。特に3900ドル台から4000ドル付近の水準では、引き続き強い買い需要が入る状況が続いています。
30日の取引は、激しい値動きが特徴的でした。日本時間の朝9時のオープンは3959ドルでしたが、その後売りが続き、昼12時には3914ドルまで下落しました。しかし、そこから反転して徐々に上昇し、日中には4045ドルまで回復する場面もありました。このところ、100ドル程度の値幅で上下に激しく動くローラーコースターのような展開が続いています。
市場参加者の間では、3900ドルから4000ドルのレンジが今回の調整局面の底値になるとの見方が強まっています。年初からの一方的な上昇を考えると、今回の調整局面は久しぶりの買いの機会として捉えられています。特に3900ドル台前半では、積極的な買いが入る傾向が見られます。
ただし、このレンジ相場がいつまで続くかは不透明です。30日の値動きを見ると、既に上値を抜ける可能性も出てきており、レンジ相場が終了して再び上昇トレンドに転じる可能性も高まっています。
世界最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェアの現物保有量は、30日時点で前日比4.3トン増加し、1040.35トンとなりました。また、2024年12月末と比べると167.83トン増加しており、投資家の金への需要が引き続き強いことを示しています。
円建て金価格も、30日は昼から大きく上昇しました。一時20041円まで上昇し、現在は19970円前後で推移しています。日本銀行が金利を据え置くとの見方から、ドル円相場は154円台まで円安が進んでおり、ドル建て金価格の上昇と相まって円建て金価格の上昇幅が大きくなっています。
銀価格は48.98ドルとなり、2.68%の大幅上昇となりました。銀は、月曜日の45.51ドルという安値から力強く反発しており、貴金属スーパーサイクルにおけるリーダーシップの役割を再確認しています。
テクニカル分析では、銀が重要なサポートレベルである日次平均47.13ドルをしっかりと上回って推移していることが確認されています。これは、構造的な需要が戻ってきていることを示しています。主権国家による現物の蓄積や、次の米連邦準備制度の政策転換を見越した戦術的なポジション取りが、価格を押し上げている要因と見られています。
アナリストは、銀価格がスーパーサイクルの初期段階にあると指摘しています。30日、60日、90日の複数のサイクルが12月から1月にかけて同期して上昇しており、季節的な需要の強さに近づくにつれて価格が加速する可能性があることを示唆しています。
銀市場では、重要な心理的抵抗線である50ドルを突破できれば、さらなる上昇が見込まれるとの見方が強まっています。テクニカル分析による幾何学的ハーモニクスは、51.21ドルへの明確な道筋を示しており、その水準を超えれば53.76ドルへの急騰が高い確率で起こり得ると予測されています。
長期的には、360日サイクルの拡張の初期段階にあり、歴史的に心理的抵抗レベルが突破されると双曲線的な動きに移行するとされています。2025年9月28日の主要な安値を起点として、2026年4月から6月にかけて、銀が急激な上昇局面に入る可能性があり、60ドルから65ドルという水準が現実的な目標となる可能性があると指摘されています。
ただし、短期的には上値が限定的との見方もあります。銀が48.00ドルを超えて上昇しても、48.65ドルから48.70ドル付近で売りが出やすく、強い抵抗に直面する可能性があります。49.00ドルを明確に上回れば弱気の見方は否定され、新たなショートカバーの動きが起こる可能性がありますが、それまでは慎重な姿勢が続くと予想されています。
一方で、銀のリースレートが再び上昇していることが注目されています。1か月物のリースレートは、一時2.85%まで低下していましたが、30日には4.55%とほぼ倍増しました。COMEX倉庫からロンドンへある程度の銀が輸送され、極端なロンドン市場での在庫不足状態は一時的に解消されましたが、構造的な銀不足は変わっていません。今後も銀のリースレートが再び急上昇する可能性は十分にあると見られています。
銀の構造的な供給不足は、太陽光発電パネルや電気自動車などの産業需要の増加によって引き起こされています。これらの分野での銀の使用は今後も増加が見込まれており、供給が需要に追いつかない状況が続くと予想されています。
プラチナ価格は1611.90ドルで0.87%の上昇となりました。プラチナは引き続き12年ぶりの高値圏を維持しており、年初来の上昇率は80%近くに達しています。
アナリストは、2025年のプラチナとパラジウムの力強い上昇を受けて、2026年の価格予測を大幅に引き上げています。プラチナは2025年、最高のパフォーマンスを記録する年となる見通しで、パラジウムも2017年以来最高の年となっています。
プラチナとパラジウムの価格上昇の背景には、鉱山供給の逼迫、関税の不確実性、そして金からの投資需要のシフトがあります。プラチナのスポット価格は年初来で約76%上昇し、パラジウムは約56%上昇しています。
複数のアナリストが2026年の価格予測を上方修正しています。これは、供給面での制約が続く一方で、需要が堅調に推移するとの見通しに基づいています。特に、金価格が高騰する中で、プラチナが相対的に割安な代替品として注目されていることが、価格を押し上げる要因となっています。
日本市場では、プラチナ先物の理論値よりも実際の取引価格が350円程度高いプレミアムがついている状況です。これは、プラチナのリースレートが高水準にあることを反映しています。理論的には、大阪取引所の先物を売却してメタルを調達し、それを貸し出すだけで大きな利益が得られる状況ですが、実際の取引ではさまざまな制約があり、単純にはいかない状況です。
それでも、先々週に見られた前例のない大きなプレミアムからは、かなり低下してきています。裁定取引を行っている市場参加者にとっては、プレミアムの縮小により取引環境が改善されつつあります。ただし、依然として通常よりも高いプレミアムが維持されており、市場の逼迫状況は完全には解消されていません。
パラジウム価格は1464.17ドルで2.98%の大幅上昇となりました。パラジウムも年初来で50%以上の上昇を記録しており、2017年以来最高の年となる見通しです。
パラジウムについても、アナリストは2026年の価格予測を引き上げています。ただし、プラチナほど強気ではなく、自動車セクターからの需要減少が価格を抑える要因として懸念されています。それでも、供給面での制約やロシアに対する制裁の影響などが、価格を下支えする要因となっています。
貴金属以外では、銅価格が史上最高値を更新したことが注目されています。3か月先物は1トンあたり11200ドルまで上昇し、年初来で27%以上の上昇となりました。米中貿易協議の進展への楽観論により、需要見通しが改善したことが主な上昇要因です。
また、金融緩和政策への期待も金属セクターにとって追い風となっています。しかし、最近の供給混乱により、開発パイプラインにあるプロジェクトが期待通りの生産を達成できるかどうかへの市場の信頼が揺らぎつつあります。
アングロ・アメリカンは、チリのコジャワシ鉱山での銅生産が、低品位鉱石の時期を経て、2027年まで通常の生産水準に戻らないと警告しました。これは、他の生産者が運営する主要鉱山での大規模なトラブルに続くものです。こうした供給面での問題が、需要の強さと相まって、銅価格を押し上げています。
貴金属市場全体として、金は米中貿易協議の進展にもかかわらず、合意内容への懐疑論から買いが継続しています。当面は3900ドルから4100ドルのレンジでの推移が予想されますが、レンジを上抜ける可能性も高まっています。
銀は構造的な供給不足を背景に、スーパーサイクルの初期段階にあるとの見方が強まっています。短期的には50ドルの心理的節目が重要な抵抗線となりますが、これを突破すれば50ドル台半ばから後半への上昇が見込まれます。中長期的には60ドルから65ドルという目標も現実的になりつつあります。
プラチナとパラジウムは、アナリストが2026年の価格予測を大幅に引き上げており、供給面での制約が継続する中で、堅調な価格推移が続くと予想されています。特にプラチナは、金に対する割安感から投資需要が流入しており、中長期的な上昇トレンドが維持される見通しです。
今後の注目点は、米中貿易合意の実際の履行状況、米連邦準備制度の金融政策の方向性、そして年末に向けた投資家のポジション調整の動きです。これらの要因が、短期から中期的な価格変動を左右することになるでしょう。
※記事はNY時間の米ドル価格での変動です。日本円の取引価格では時差と為替の変動が加味されます。






